Published: 2025-05-07 13:12

新型GRカローラの地道な進化はスゴい!!! トヨタがホットハッチにこだわるワケとは？

一部改良を受けた進化型「GRカローラ」は、街中で乗っても楽しめるホットハッチだった！ 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターの稲垣がリポートする。

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今回の試乗車は、GRカローラの「RZ」グレードで、6MT（4WD）仕様。東京都心部でドライブを楽しんだ。

エクステリアは、冷却性能と空力性能を進化させるべく微妙に変わっている。

たとえばバンパーコーナー部の段差だ。これにより、安定的に小さな乱気流を発生させ、バンパーコーナー部からの空気の剥離を抑制。冷却性能強化のため必要な各機構を追加しながら、操縦安定性を確保したという。

もうひとつはフロントバンパーのサイドダクト。ATFクーラーから排出された空気がサイドの空気の流れを乱すことなく後方へ流れるよう計算された突起形状を採用し、空気をスムーズに排出するという。

限界性能を試す場所こそなかったものの、公道でも、当初のモデルより安定性が増していたのは実感した。

特にコーナリング時の安定性が増した。首都高速道路のコーナーを、路面に吸い付くよう駆け抜けていく。無駄な減速は不要。普段のドライブから、ちょっとしたスポーツ走行まで幅広く楽しめるのが嬉しい。

今回の一部改良で、前後ショックアブソーバーにリバウンド側で作動するスプリングを内蔵し、旋回時の車両姿勢と内輪の接地荷重特性を改善。さらにリヤアクスルの回転中心であるトレーリングアーム取付点を上げ、加速時のリヤの沈み込みを低減。アクセル操作に対する車両姿勢変化を抑えることで、駆動力の応答性を向上させるとともに安定した姿勢でのコーナーリングを実現したと謳う通りだ。

加速性能もイイ。コーナーでの立ち上がり加速に重要な中速域でのエンジントルクを現行型に対して30Nm増加させ、最大トルクを400Nmまでに高めた効果が大きい。立ち上がり時にアクセルを踏み込むと、レーシングマシンの如く鮮やかに加速する。しかも、前出に記した通り安定性が向上したから、豪快な加速時の不安は皆無。シームレスにグイグイ進む。

高性能を手軽に味わえるGAZOO Racing Direct Automatic Transmissionの新設定が、今回の改良における注目ポイントだが、6MTを自らの手で操るのも、ちょっと面倒だけれど楽しい。

6MTは、「iMT（インテリジェントマニュアルトランスミッション）」と、呼ぶ最新の制御技術を搭載する。iMTスイッチを押すと、6速iMTがスタンバイ状態になり、この状態で変速動作（クラッチ操作、シフト操作）を検出すると、変速後のエンジン回転数を合わせるように制御するのだ。試しにiMTをオンにしてシフト操作をすると、システムが勝手にエンジン回転数を合わせてくれるので、変速はかなりスムーズ。久しぶりにMT車を乗るユーザーも、安心して変速を楽しめるはずだ。

こんな便利な機能があるなら、もはやMTの必要性がないのでは？ と、思うかもしれないが、iMTをオフにし、自ら回転数を合わせたり、ヒールアンドトゥをしたり、といったMT車ならではの“作法”は、クルマ好きにとっては他に代えがたい魅力だと思う。

今回の一部改良で、アナウンスこそなかったものの、操縦安定性や空力性能向上に伴い、乗り心地も向上したように思う。スポーツモデルだから凹凸のショックはそれなりにあるものの、ややマイルドになったように感じた。特にリヤシートは恩恵が大きく、コーナリング時の安定性が向上した分、ボディが揺さぶられないようになったため快適性が増した。ファミリーカーとして使うのも大いにアリだ。GAZOO Racing Direct Automatic Transmissionも設定されたからドライバーを選ばなくなったのも朗報だ。

試乗車の価格は¥ 5,680,000。ライバルはホンダ「シビック タイプR」だろう。¥ 4,997,300だから、意外と価格差がある。ただし、GRカローラが4WDであるのに対しシビック タイプRはFWD（前輪駆）だから、単純に比べるのは難しい。輸入ブランドだと真っ先に思い浮かぶのはルノー「メガーヌR.S」だが、すでに生産終了。今や5ドア＋MT＋高性能エンジンという組み合わせはかなり希少な存在である。

そうした市場環境にあって、トヨタがGRカローラを投入したのは驚きでしかないし、それに地道な改良を加えていくのもスゴい。モリゾウ（豊田章男代表取締役会長）の熱い思いあってこその1台なのだ。