Published: 2025-04-30 18:08

【Ｑ＆Ａ】日本人は睡眠不足？睡眠障害ってなに？専門家に聞く

診療科の名前に「睡眠障害」を掲げられるようにする動きが出ています。実は、日本人は先進国の中でも睡眠時間が短く、睡眠に関する悩みを抱えている人が少なくありません。そもそも「睡眠障害」って？睡眠が足りないとどんな影響が出るの？そんな疑問について日本睡眠学会の内村直尚理事長に聞きました。

「睡眠障害」診療科名に追加を要望 「睡眠障害内科」など想定 【Q＆A】日本睡眠学会理事長に聞く 睡眠障害とは？どう変わる？ 日本睡眠学会 内村直尚理事長 Q. 日本人は睡眠が足りないのですか？
国の調査では5人に1人が睡眠による十分な休息を取れていないと感じていて、多くの人が睡眠に関する悩みを抱えています。

また、厚生労働省は、成人については1日6時間以上睡眠時間を確保することを推奨していますが、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は、男性は37.5％、女性は40.6％にのぼります。

さらに、OECD(経済協力開発機構)が2021年に公表した調査では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、各国の平均より1時間以上も短く、加盟する33か国の中でも最も短くなっています。 Q. “眠れない”のは病気ですか？ 眠れないだけでは病気ではありませんが、日中にも支障が出るなど、睡眠に関するさまざまな病気をまとめて「睡眠障害」と呼びます。たとえば、寝ようとしてもなかなか寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなど、いわゆる「不眠」の症状もその1つです。

また、日中に過剰な眠気が起きる▽寝ている間に呼吸が止まるまたは浅くなるなどの症状も該当し、こうした症状が1か月以上続くような状態が睡眠障害の疑いがあります。 Q. 睡眠障害を放置するとどうなりますか？ 睡眠不足の状態が慢性化すると、高血圧や糖尿病、それに認知症やうつ病など体や脳、それに心などの病気のリスクが高まります。

また、十分な睡眠をとることは体の免疫力を高めることにもつながるので、病気を事前に予防する意味でも重要です。寝られないからといって寝る前にお酒を飲む人もいますが、寝ることはできても、眠りの質は悪くなり、結果的に体調が悪くなるおそれがあります。 Q. なぜ、診療科の名前に「睡眠障害」を掲げられるように求めているのでしょうか？ 現状では、寝られないなどの症状がある場合には、身近なかかりつけ医もしくは精神科などに行くことが望ましいとされています。

ただ、不眠などの症状があってもどこに相談すれば良いのか分かりにくいとか、そもそも診察をうけるものなのか認識されていないなどの課題がありました。結果として治療の時期が遅れて睡眠障害だけでなく、他の病気も併発した状態でようやく病院に来る人が少なくないのが実情です。

そこで、日本睡眠学会としては、関係する学会の賛同を得て、診療科の名前に「睡眠障害」を掲げられるよう、厚生労働省に要望書を提出しました。 Q. 今後、どうなるのでしょうか？ 国の専門家会議の議論などを経て追加が認められれば、病院の診療科に例えば「睡眠障害内科」や「睡眠障害精神科」など、従来からある内科や精神科などの診療科名と組み合わせて表記されることになります。こうなれば、睡眠に悩む人がどこの病院に行けばいいかわかりやすくなり、早期の段階で適切な受診につながることが期待されます。

改めてですが、十分な睡眠の確保は大切です。慢性的な寝不足の状態になると、日中、眠気を感じるようになり仕事や勉強の効率が低下し、集中力が落ちたり、ミスが増えたりするほか、精神的にイライラしたりして周囲とのトラブルにつながるおそれもあります。

さらに、そういう自分を責めて抑うつ状態になりやすい人も少なくありません。睡眠障害かもしれないと感じた場合は、早めに医療機関を受診することを考えてほしいです。