Published: 2025-08-28 21:01

1970年代に印象的だった日本車のイメージキャラクター3選

あの頃、日本車の広告は面白かった！

【写真】これが1970年代に印象的だった懐かしの日本車だ!!!（71点）

1970年代はクルマに対する、ユーザーの思い入れが強かった時代。

“夢”と言い換えてもいいかもしれない。あのクルマに乗ると、こんなひとになれるかも、という憧れを、テレビコマーシャルに登場するタレントが引き受けていた。

当時といまとの違いは、“おとなっぽさ”が“善”だった点。若々しさをよしとする傾向は、1990年代のハリウッドで顕著になり、日本でもそれに影響されていった感がある。

ハリウッドの傾向に気づいた女優ロザンナ・アークイット自身が監督し、米国と欧州の若さと美に対する価値観の違いを浮き彫りにした米のドキュメンタリー映画『デブラ・ウインガーを探して』（2002年）。あたらしい時代の審美観をテーマにしていて、衝撃的だったのを覚えている。

いま振り返ると、日本の70年代は、そんな浮ついたこともなく、落ち着きや重厚さが、プロダクトのイメージアップにつながっていた。クルマも同様。価格とともにユーザーのイメージが階層的に定まっている感もあった。

なので、昨今、20代の人が、当時は“おとな”のクルマとされたクラウンやセドリックの中古車に嬉々として乗っているのを観るのは、おもしろい。

ここでは、1970年代に話題を呼んだテレビコマーシャルと、そこに登場した俳優を紹介。どれも、各メーカーにとって重要な車種だったので、人選も興味深い。

1974年に発表された第5世代のトヨタ・クラウン。特筆すべき点は4ドアピラードハードトップと、最上級グレードとしてロイヤルサルーンの設定だ。

ハードトップとは、米国で大きな人気を博していた車型で、本来はソフトトップ（幌）に対する固定式ルーフの意味。なので基本は2ドアクーペで、フルオープンモデルにはウインドシールドまわり以外のピラーはない、という解釈に立って、前席ドア背後のBピラーは省略された。

なかでも4ドアハードトップという形式は、1940年代にカイザー「フレイザー」が実用化。そののち、セダンより若々しいイメージが奏功して、多くのメーカーが採用。日本でも市場に受けいれられたが、トヨタ自動車は、あくまでBピラーを残すことにこだわった。

外から観ると、Bピラーが細かったり、あるいは見えなかったりするが、じつはちゃんとある。それがトヨタのピラードハードトップ。競合他社がピラーレス4ドアなどで売り上げを伸ばしているときは、トヨタ社内にも葛藤があったかもしれない。でも、車体の剛性や衝突安全性の観点から、トヨタには見識があったのだ。

で、クラウンの4ドアピラードハードトップは、重厚だったクラウンに、多少のパーソナル性を加味したのが、コンセプトとして画期的だった。

テーマが“美”で、商品のキャッチコピーは「美しい日本のクラウン」。いまテレビコマーシャルを観ると、第5世代のクラウンはモサーッとしたスタイリングで、流麗さは感じられないが、運転席に俳優の山村聡（1910年生まれなので当時60代）、助手席に吉永小百合という組み合わせは印象的だった。ふたりは夫婦でもなさそうで、すこし色っぽい雰囲気。クラウンのイメージを少し変えてくれた。