Published: 2025-09-29 20:31

マクラーレンGTSほど便利な“スーパーカー”がないかもしれないワケとは

久しぶりに乗ったマクラーレン「GTS」は、類い稀なスーパーカーだった！ 『GQ JAPAN』ライフスタイル・エディターのイナガキがリポートする。

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新型マクラーレンGTSに乗り込むと、タイトなキャビンがスーパーカーであることを主張する。

試乗車のインテリアはホワイトのレザーを各所に使っているため、華やかで明るい。やや広々感を高める効果もあって、個人的には、ふたり乗りのスーパーカーにこのカラーリングは大いにアリだ。

マクラーレンGTSの大きな特徴は、ミッドシップスーパーカーとは思えぬ積載性の高さだ。フロントのみならずリヤにもラゲッジルームも用意する。容量はフロントこそ150Lだが、リヤはなんと420L！ ちょっとしたセダンと変わらない。

リヤの荷室は、大型の電動開閉式テールゲートを跳ね上げればアクセス可能だ。荷室フロア下部にエンジンが搭載されているため、天地が浅くやや歪な形状。それでも、ゴルフバッグを縦に1本積める上に、周囲に小さなバッグなども置けるのだからスーパーカーとは思えぬ実用性に脱帽だ。

デビューから約6年を経たものの、マクラーレンGTおよびGTSを超える実用的なミッドシップスポーツカーはないと思う。以前、1週間ほどマクラーレンGTと生活を共にしたとき、「コレ1台でカーライフは十分かも」と、思ったほどだ。

走り出すと、ほかのマクラーレンと比べてややマイルドではあるものの、超高性能であることは変わりない。ペダルの位置や重さは、フツーのメルセデス・ベンツやBMWと比べるとかなりレーシー。でも、それがかえってマクラーレンを所有する歓びを感じる。

搭載するエンジンは4.0リッターのガソリンツインターボV8エンジンで、最高出力は635ps、最大トルクは630Nに達する。数値の通り、アクセルをほんのわずかに踏み込めば爆発的な加速を楽しめる。ただし試乗時は雨天だったので、当然、奥まで踏み込む勇気はナシ。それでも、フツーに走るだけ驚異的な性能を持ったマシンであることはすぐわかる。

ちなみにパフォーマンスデータを確認すると0〜100km/hの加速タイムは3.2秒で、最高速度は326km/h！ これほどのパワーをフルで体感できる場面は、日本ではサーキットくらいだろう。ただし、50〜60km/hで街中を流しているだけでもV8エンジンのスポーティなサウンドが心地よく、ドライブが気持ちいい。マクラーレンの世界観が十分に味わえる。

乗り心地は、想像するより悪くない。特にコンフォートモードでは、路面の凹凸をしなやかにいなす。プロアクティブダンピングコントロールを搭載したサスペンションのチューニングが絶妙だ。高速道路のつなぎ目も、不快なショックはナシ。上質なレザーを使ったシートの素晴らしい座り心地と相まって、上質なクルージング空間だ。

優雅な高速移動にふさわしいのは、オプションのパノラミックガラスルーフだ。エレクトロクロミックガラスパネルを使い、ドライバーはボタンひとつで光の透過率5段階から選べる。最も暗い設定では、エレクトロクロミックルーフの光透過率を0.6％まで下げられる。

久しぶりに乗ったマクラーレンGTSは、実に優雅なスーパーカーだった。実用性も高く、マクラーレンのラインナップではもっとも気軽に乗れるのも大きな魅力だ。マクラーレンやフェラーリなどを所有するユーザーの多くは複数台持ちだろうから、スーパーカーに実用性はあまり求めないかもしれない。

でも、スーパーカー1台だけで生活したい、カーライフを送りたいと考えている人には自信を持ってマクラーレンGTSを勧めたい。

これほど便利なスーパーカーは、世の中にないはずだ。