Published: 2023-06-20 11:50

デザイン責任者インタビュー：次世代MINIの「カリスマティック・シンプリシティ」という考え方

ボディサイズもデザイン言語も異なるにもかかわらず、「MINI（ミニ）」であることがひと目でわかる──。それがミニの新しい電気自動車（EV）のコンセプトモデルとしてBMWが発表した「MINI Concept Aceman（コンセプト・エースマン）」の実物を見た印象だった。

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丸かったヘッドライトは多角形型になり、口を開けたようにも見えていたグリルは開口部のない八角形のものになった。5ドアのクロスオーバーSUVらしくマッシブでありながら、それでもミニらしい愛嬌がある。あくまでコンセプトモデルだが、このデザインの8割程度が2024年に発売予定の量産モデルに引き継がれるという。

この「新しいデザイン」を主導したのが、MINIデザイン部門責任者のオリバー・ハイルマーだ。電動化や自動化といった100年に一度の変化の嵐が自動車業界に吹き荒れるなか、モビリティの“未来”を予測し、ブランドの価値を時代に合わせてアップデートしていく作業は困難を極めたはず。ハイルマーは何を考え、コンセプトを目に見えるデザインへと昇華させていったのか。本人に尋ねてみた。

2017年にミニのデザイン部門責任者に就任したハイルマーは、まず最初に「MINI」というブランドを深く理解することから始めたのだという。そのうえで、世界の変化がどこに向いているのか、自動車そのものや移動の概念がどう変化していくのか、それを見極める作業からすべてをスタートさせた。

「わたしたちは自分たちの強い価値観を定義する必要がありました。数年どころか10年後にも通用するかもしれないもので、クリエイティブ・マインドセットとでも言えるかもしれません」と、ハイルマーは説明する。「それには好奇心が欠かせません。（初代ミニの生みの親である）アレック・イシゴニスは好奇心から新しいものを生み出したのですから」

イシゴニスは、横置きエンジンによる前輪駆動の構造をはじめとする画期的なアイデアの数々に基づいてミニを設計した人物だ。そして全長わずか3m強という極端に小さなサイズで、4人の大人が乗れるクルマを実現させたのである。そのレガシーを受け継ぎながら新しい価値を創造していくことを立脚点に、新しいデザインはつくられていった。

つまり、イシゴニスのような好奇心があるからこそ、ミニにとって重要な価値観のひとつとなる「大胆な遊び心」も発揮できるということにもなる。「群衆のなかで突出した存在になれるだけの自信がある、ということが重要なのです。それは必ずしも物理的なサイズのことではありません」と、ハイルマーは言う。

だからこそ、MINI Concept Acemanの全長は4.05mという小さなサイズにとどめられている。そして、そこにも実は「責任感」という重要なメッセージが潜んでいるという。ミニのアイデンティティでもある最小限のフットプリント（占有領域）を維持することで、未来に向けて「より優れたものを、より少ないかたちで」提供し続けるという“約束”だ。「これは持続可能性を超えたものであり、ブランドの行動全体を意味していると考えています」と、ハイルマーは語る。