Published: 2025-09-25 20:30

新型BMW X7 M60i xDriveの最大の弱点が、最大の魅力であるワケとは？

BMWの新型「X7」の高性能バージョン「M60i xDrive」に、今尾直樹が試乗した。大型SUVとは思えぬ走りに迫る。

【写真を見る】新型BMW X7 M60i xDriveの全貌（25点）

エアサスペンションがもたらす乗り心地はベスト＆ブライテストレベルである。

いかなるときでもフラットな姿勢を保ち、極めてスムーズで快適な室内空間をキープしてくれる。ホイールは22インチのフルサイズ。タイヤは前275/40、後ろ315/35という、前後で異なる超極太扁平サイズ。なのにバネ下が暴れる感は皆無といってよい。少なくともお台場から首都高で東京・八重洲の地下駐車場まで往復。という今回の試乗コースでは丁寧に手入れされた芝生の上を走っているみたいな感じでしょうか。

いや、これは誤解を招く。アスファルトの路面をヴィヴィッドに伝えてきたのだから。

ともかく、セルフレベリングとロール制御も備えたエアサスペンションの働きは“あっぱれ”である。“熱盛”も差し上げよう。コンフォートモードだと、ややソフト、でもフワフワではなくて、穏やかにスポーティ、スポーツモードに切り替えても硬くなりすぎることはなく、大型の高級車らしい上質なスポーティネスを味わわせてくれる。

BMWは今回、オプションで同ブランド初の23インチホイールも用意しており、おそらくは彼らのこのエアサスの仕上がりに自信を持っているにちがいない。

舵への入力に対する反応はM60iでは標準装備となるインテグレーテッド・アクティブ・ステアリング、いわゆる4WS、後輪操舵の貢献もあるはずだ。最近の4WSらしく、ドライブしていても4WSであることが察知できないぐらいナチュラルで、筆者としてはこの象のような大きさを意識することなく運転したのだった。

問題は駐車、とりわけ都内の古くて狭い地下駐車場だ。たとえば、首都高速とつながっている東京・八重洲駐車場とか。筆者がヘタだということを棚に上げて申し上げると、やっぱりでっかいぞう。北海ぞうだった。基本的にボディの見切りはよいし、駐車時には上からの画像を見せてくれる。センサーも付いていて、衝突前にブレーキをかけて停止してもくれる。使わなかったけれど、自動駐車システムも装備している。

とはいえ、油断は禁物。ボディが小さくなるわけではない。

しかして、最大の弱点が最大の魅力でもある、とはこのことである。X7はボディが大きくて、3列シートで、7人乗れる。ミニバン的にも使えるのはこのサイズがあればこそ、である。現行7シリーズにはMの文字がつくガソリンモデルはラインアップにないから、フロイデ・アム・ファーレン、駆けぬける歓びを味わえる、内燃機関のスポーティ＆ラグジュアリーな大型車を望む人には最適だ。

車両価格は¥17,740,000。スペシャル・カラーの「フローズン・ブラック・メタリック」が選べるような方なら、安いと感じるのではあるまいか。この塗装、オプションで¥840,000。

2019年に登場したX7は2022年のフェイスリフトで現行7シリーズと同じ顔が与えられ、BMW Xディヴィジョンの王であると同時に、バイエルン全体を代表する2トップの1台であることを明快にしている。

X7 M60i xDrive は、それにふさわしい品格とスポーティヴネスを備えているのだった。