Published: 2025-05-08 18:25

小さな子ども連れたスポーツ観戦 「ためらいある」が7割以上

小さな子どもを連れた親のスポーツ観戦について、日本スポーツ振興センターが競技会場でアンケートを行った結果、移動の大変さや周囲への迷惑から観戦に心配ごとやためらいがあると回答した人が7割以上にのぼったことがわかりました。

このアンケート調査は、国立競技場などを所有する日本スポーツ振興センターが、育児中の社会的な孤立といった課題にスポーツ観戦という切り口でアプローチしようと行いました。

去年9月からことし2月までのサッカー・Jリーグやバスケットボール男子のBリーグなどの15試合で、持ち運びのできるキッズチェアの貸し出しを行って利用者へのアンケートを実施し、0歳から6歳までの子どもがいる親84人から回答を得ました。

それによりますと、子どもとのスポーツ観戦について「心配ごとやためらいがある」と回答した人は76.3％にのぼり、「これまでに子どもと観戦したいと思っていたができなかった」と回答した人も17.7％いました。

観戦をためらう理由を複数回答で尋ねたところ、
▽「施設の中の移動が大変」が70.5％で最も多く、
▽「施設までの移動が大変」と「周りの人に迷惑をかけないか心配」がいずれも69.2％、
▽「大人のひざに乗せて観戦することが負担」が61.5％などとなりました。

一方、貸し出したキッズチェアを使用しての観戦については64.6％が「とても満足」、30.5％が「少し満足」と回答しました。

日本スポーツ振興センターは、誰もがスポーツに親しめる環境の整備に向け、スポーツチームやリーグなどに対し、支援の重要性や課題の周知を進めていくことにしています。 調査団体「交流や接点の機会阻害も」 今回のアンケート調査を行った日本スポーツ振興センター総合企画部の久保田潤主幹は「育児中の親の多くが子どもと一緒にスポーツ観戦をしづらいという現実があることが改めて示された。育児中の親の社会的孤立という課題に対して、スポーツ観戦は人々の交流や接点を生む場とも考えられる。親が観戦しづらいということはそうした機会を阻害されている可能性がある」と指摘しました。

そのうえで「まずはチームや施設運営者などスポーツイベントに関わる人が、育児中の親がスポーツ観戦をしづらいと感じている実態を理解することが大切だ。その障壁を緩和するために、可能な範囲で課題に配慮した取り組みを行っていくことが大事だ」と提言しました。

さらに社会的な認知も重要だとしていて、「子ども連れや障害がある人の観戦の課題や実態を広く理解してもらう取り組みを合わせて実施していくことが、よい環境を整えることにつながっていくと思う」と話していました。 親の声「ほかの人の迷惑にならないかと心配」 子どもを連れたスポーツ観戦の悩みや課題について、先月26日、バスケットボール男子、Bリーグの試合が行われた東京 渋谷の代々木第一体育館で聞きました。

5歳の女の子の父親は「ぐずったり、眠くなったりすると横になってしまうことがあり、そういう時は困ってしまうことがある。子どもと一緒に行って不便なことが出てくると、『一緒に行って大丈夫かな』と思うこともあるので、支援のサービスがあると行きやすくなると思う」と話していました。

小学2年生の女の子の母親は、「バスケットボールの試合が思っていたより長くて、小さいころは途中で寝てしまって、連れて帰るのが大変ということは多くあった。赤ちゃんだとおむつを替えるとか、長時間座っているのが難しいと思うので、諦めてしまうところはある。スポーツ観戦では親も楽しみたいので、託児サービスなどがあるといろいろな世代が見に来られるかなと思う」と話していました。

5歳の男の子の父親は「ほかの人の迷惑にならないかなということも心配になるが、おむつを替えるスペースが男子トイレにないことが多いので困ることがある。子どもは騒いだり、試合を最後まで見られなかったりするので、子どもと来やすい環境は大事だと思う」と話していました。

小学4年生の男の子の母親は、「最初に来たのは子どもが小学1年生の時だったが、最後まで集中して見ていられなかった。『どうしようかな』と思っていたら、会場内に子どもの遊ぶ場所が用意され、そこを利用するうちに試合にも慣れて、最終的にははまって見てくれるようになった。スタッフも優しく声をかけてくれてウエルカムな感じだったので行きやすかった」と話していました。 Bリーグ アルバルク東京 支援の取り組み進める 子ども連れの親が不安なくスポーツ観戦を楽しめるようにと、支援の取り組みを進めているスポーツチームも出始めています。

バスケットボール男子、Bリーグのアルバルク東京は、3年ほど前から、小さな子どもとその親が一緒に観戦を楽しめるよう、支援策やイベントに力を入れ始めました。

その1つが託児サービスで、ホームアリーナの1つである東京 渋谷の代々木第一体育館での試合では、原則、事前申し込みが必要ですが有料でシッターが子どもを預かり、子どもも会場の雰囲気を味わえるよう、アリーナ内の散歩などを行っています。

また、子どもたちがマットや塗り絵などで遊びながら、親は大型ビジョンで試合の様子を見ることができる「キッズエリア」を設置したり、大きな音をやわらげる防音用のイヤーマフや、客席に取り付けられるキッズチェアの貸し出しなどを行ったりしているということです。

そのほか、子どもが飽きずに楽しめるような取り組みも充実させていて、コートサイドで間近に選手たちの試合前の練習を見られるイベントを行ったり、会場の外に子ども用の遊具などを設置したりしています。

チームの運営会社「トヨタアルバルク東京」の手塚明子さんは、「子どもがいるから観戦に行きづらいというマイナス要素は、極力なくしていきたい。いろいろな人が会場を楽しめる、また来たいと思ってもらえる空間作りをやっていきたい」と話しました。

そのうえで「親子で一緒に観戦した体験が、家族でのコミュニケーションにつながってほしい。子どもも親も一緒に会場に来てもらって、そのスポーツを好きになって、ファンになってもらう。それがスポーツ全体のすそ野を広げることにつながればいいなと思う」と話していました。